警視庁組、四つの恋物語セレクション
『名探偵コナン』の警視庁には、高木刑事と佐藤刑事の「本庁の刑事恋物語」以外にも、ひっそりと育まれてきた恋模様がいくつも存在します。千葉刑事と幼馴染の三池苗子、由美と将棋の名人・羽田秀吉、そして白鳥警部と少年探偵団の担任・小林先生——それぞれ違ったテンポとすれ違い方で、警視庁組のラブコメを賑やかにしてきました。
今回は「高木刑事×佐藤刑事」「千葉刑事×三池苗子」「宮本由美×羽田秀吉」「白鳥警部×小林先生」という4組に分けて、警視庁組の恋物語セレクションをお届けします。2020年の「標的は警視庁交通部」、2024年の「トリプルコラボの浮気疑惑」では、複数の組が同じ話数で交差する場面もあります。
高木刑事×佐藤刑事編:本庁の刑事恋物語
#146-147「本庁の刑事恋物語(前編/後編)」(1999-05-24/05-31)
高木が佐藤に一目惚れしていることが初めて明確に描かれる回です。由美から「佐藤刑事は本庁の誰かが好きらしい」と聞いた高木は、てっきり白鳥警部が想い人だと誤解しますが、実際に佐藤が想いを寄せていたのは目暮警部だったというオチが待っています。「自分は呪われていて、大切に想った人はみんないなくなってしまう」という佐藤の切ないセリフも印象的です。
#156-157「本庁の刑事恋物語2(前編/後編)」(1999-08-09/08-16)
杯戸美術館の事件で、逃亡中の被疑者と佐藤刑事がなぜか手錠で繋がれてしまい、トイレに閉じ込められるというハプニングから始まる回です。高木はコナンの力を借りながら真犯人を追い、佐藤が目暮警部について「お父さんみたいで好き」と語る場面で、高木の誤解が少しずつ解けていきます。
#205-206「本庁の刑事恋物語3(前編/後編)」(2000-08-28/09-04)
佐藤刑事の父・佐藤正義警視正が18年前に殉職していたという重い過去が明かされる回です。高木は父の形見の手錠を借りて捜査に使いますが、自身が監禁される羽目になっても「形見を傷つけまい」とその手錠を壊そうとしない優しさを見せます。事件解決後、佐藤に呼び出された高木を待っていたのは、実質「張り込み」だったというオチです。
#253-254「本庁の刑事恋物語4(前編/後編)」(2001-10-15/10-22)
佐藤に白鳥警部とのお見合い話が持ち上がる、シリーズ屈指のターニングポイント回です。佐藤は「日が暮れるまでに高木が迎えに来たら見合いはご破算、来なければ結婚する」と啖呵を切り、高木はコンビニ強盗事件を解決してギリギリ間に合います。これをきっかけに、佐藤が高木への想いをはっきりと自覚することになります。
#301-302「悪意と聖者の行進(前編/後編)」(2002-11-25/12-02)
東京スピリッツの優勝パレード警備中、変装した高木の姿がのちに殉職する松田陣平刑事に似ていたため、佐藤が思わず高木を平手打ちしてしまう回です。松田陣平が本格的に存在感を増す回でもあり、佐藤と松田の関係性という、のちの伏線にもつながっていきます。
#304「揺れる警視庁 1200万人の人質」(2003-01-06)
3年前の連続爆破事件で殉職した松田陣平を忘れられずにいる佐藤が、再びの爆弾予告に取り乱してしまう回です。高木が「ダメですよ…忘れちゃ…それが大切な思い出なら、忘れちゃダメです…人は死んだら、人の思い出の中でしか生きられないんですから」と声をかける名場面があります。ラストで佐藤が松田からのメールを消去しながら「バイバイ松田くん。でも忘れないからね」とつぶやく場面も印象的です。
#358-359「本庁の刑事恋物語5(前編/後編)」(2004-05-03/05-10)
トロピカルマリンランドでデート中の2人を描く回です。高木は指輪をバッグに忍ばせプロポーズのタイミングを狙いますが、少年探偵団と鉢合わせてデートは台無しに。さらにバッグが何者かとすり替わってしまい、中身が非合法ドラッグだったことから事件に巻き込まれ、指輪を渡すこと自体は失敗に終わります。
#390-391「本庁の刑事恋物語6(前編/後編)」(2005-02-28/03-07)
高木の鳥取県警派遣という(由美が広めた)デマ話に佐藤が動揺してしまう回です。「本当に好きなら…少しでもオレの事想っているんなら…ちょっとぐらい動揺してくれたっていいじゃないですか…」という高木のセリフと、「しないよね?浮気…」という佐藤の不安げなセリフが印象的です。実際に派遣されるのは別の高木刑事だったというオチが待っています。
#431-432「本庁の刑事恋物語7(前編/後編)」(2006-02-20/02-27)
高木が合コンに参加し佐藤と鉢合わせてしまう中、合コン主催者の従妹が誘拐されるという事件が発生する回です。犯人であっても人命救助を優先する高木の姿に佐藤が惹かれていく展開で、「人を捕まえるより助ける事の方が遥かに大切な事…」「じゃあ私もハズレクジ…なのかな?」という佐藤のセリフが心に残ります。
#449「本庁の刑事恋物語 偽りのウエディング」(2006-08-21)
強盗犯の脅迫を受けた本物の新郎新婦の身代わりとして、高木と由美が偽装結婚式のおとりを務める回です。由美にべったりな高木の様子に、佐藤が「調子に乗りすぎ」と苦言を呈する一幕もあります。
#487「本庁の刑事恋物語8 左手の薬指」(2007-10-15)
佐藤が左手の薬指に指輪をつけて登庁し、高木は「自分が贈った覚えがない」と動揺しながらミステリー作家殺害事件を捜査する回です。事件解決後、指輪の正体は高木からのプロポーズではなく、佐藤自身の「魔除け」だったというオチで締めくくられます。
#748-749「本庁の刑事恋物語(告白/真相)」(2014-08-02/08-09)
隣室で刺殺された男性を巡る事件が本筋のアークですが、恋愛サブプロットとして、佐藤が高木に「見てわかんない?無いのよあれが」と意味深に告げる場面が話題です。妊娠かと動揺して「責任を取る」覚悟をする高木ですが、真相は佐藤が警視庁捜査一課支給の赤バッジを落とし、それを高木が拾って預かっていただけというオチでした。
千葉刑事×三池苗子編:気づかない幼馴染
#624「初恋のビデオレター」(2011-07-16)
帝丹小学校OBの千葉が、小学6年生時代に出した初恋のラブレターの返事を捜す回です。視聴覚室のビデオの中に「わたしも好き」という13年越しの返事を発見し両想いだったと判明しますが、同窓会に相手は現れません。実は駐禁切符を切った婦警こそ成長した初恋の相手・三池苗子であることが視聴者には示唆されますが、千葉自身はまだ気づいていません。
#659-660「初恋の共同捜査(前編/後編)」(2012-06-09/06-16)
連続車上荒らし事件の被害者の一人である千葉と、この時点で異動してきた苗子が共同捜査することになる回です。周囲の機転で2人きりで捜査させられますが、至近距離で接しても千葉は苗子が初恋の相手だと気づかないまま、片想いが続いていきます。
#847-848「千葉のUFO難事件(前編/後編)」(2017-01-28/02-04)
苗子が匿名でダイエット資料を千葉に送り、千葉が見違えるほど痩せてイケメン化してしまう回です。職場で人気者になり女性同僚から言い寄られる千葉を見た苗子は、今度は大量の手作りチョコを送りつけてわざとリバウンドさせ、独り占めに成功します。
#971-974「標的[ターゲット]は警視庁交通部(一〜四)」(2020-03-07〜03-28)
交通部の女性警官を狙う連続殺人事件で苗子も標的にされ、ボウガンで狙われた千葉を苗子が身を挺して庇い負傷してしまいます。信号無視をしようとした千葉を、苗子が幼少期と同じ言葉で「赤信号で渡ってはいけない」と制止したことから、千葉はついに苗子が幼馴染の初恋相手だったと気づき、長年の片想いがようやく両想いへと結ばれます。
#1130-1131「トリプルコラボの浮気疑惑(前編/後編)」(2024-07-20/08-03)
ファミレスで少年探偵団が、苗子とは別に千葉が小林先生と同席している姿を目撃し浮気を疑ってしまう回です。千葉と苗子はお互いを問い詰め合いますが、実際は千葉が苗子へのサプライズプレゼントの相談を小林先生に持ちかけていただけだった、という誤解でした。
宮本由美×羽田秀吉編:元カップルの腐れ縁
#731-732「現場の隣人は元カレ(前編/後編)」(2014-03-01/03-08)
由美が担当する事件現場の隣人が、実は由美の元カレ・羽田秀吉だったと判明する初登場回です。冴えない印象の秀吉ですが、実はコナンより早く事件の手がかりを発見し、将棋の「太閤名人」であることが明らかになります。互いを「由美タン」「チュウ吉」と呼び合う、どこか憎めない元カップルの空気感が見どころです。
#785-786「太閤恋する名人戦(前編/後編)」(2015-07-18/07-25)
秀吉の名人戦(七冠がかかる大一番)の最中、「恋人の由美を誘拐した」という脅迫状が届く回です。秀吉は将棋の暗号文を解読しながら対局と由美の救出を両立させようとし、コナンも別の暗号を解読して手がかりを突き止めます。最終的に由美は無事救出され、秀吉は七冠を達成します。
#849-850「婚姻届のパスワード(前編/後編)」(2017-02-11/02-18)
731-732話で渡された「7つ揃うまで開けないで」の封筒の中身が、実は婚姻届だったと判明する回です。由美が誤って封筒を処分してしまい、それを回収したマンション管理人(秀吉のファン)が暗号を解かないと返さないと言い出すところから、コナンたちが折り紙に隠された暗号を解読していきます。
#971-974「標的[ターゲット]は警視庁交通部(一〜四)」(2020-03-07〜03-28)
交通部女性警官連続殺人事件で由美も標的にされかけ、秀吉は心配のあまり由美に電話をかけ続けますが、頻度が高すぎて着信拒否されてしまいます。秀吉はさらに実兄の赤井秀一(沖矢昴)にこっそり由美の警護を依頼する一幕もあります。
#1033-1035「太閤名人の将棋盤(初手/妙手/王手編)」(2022-01-08〜01-22)
将棋棋士連続殺人事件を巡るアークで、秀吉自身にも疑いの目が向いた末に誘拐されてしまいます。由美は秀吉が「大事な人と会う」と言って出かけたことに浮気を疑い尾行しますが、実際は将棋の勉強会でした。監禁された秀吉が電話越しに目隠し将棋の手を伝えることで、自分の居場所を間接的に知らせようとする見せ場もあります。
#1130-1131「トリプルコラボの浮気疑惑(前編/後編)」(2024-07-20/08-03)
由美は秀吉が(自分ではなく)苗子と一緒にいる姿を目撃し浮気を疑ってしまいます。実際は由美へのサプライズの相談で苗子に協力してもらっていただけ、という誤解でした。
白鳥警部×小林先生編:運命的なすれ違い
#568-569「白鳥警部、桜の思い出(前編/後編)」(2010-03-13/03-20)
白鳥が子供の頃、書店で万引き犯に立ち向かった少女を助け、お礼に「桜は警察の人がみんなつけてるマークだよ!強くて優しくてカッコイイ…正義の花なんだから!」という言葉をもらった記憶を持つ回です。映画館で偶然出会った女性を「運命の少女」だと思い込みますが、後に歩美が同じセリフを口にしたことから、実は少年探偵団の担任・小林先生こそが初恋の相手だったと気づいていきます。
#583-585「小林先生の恋/白鳥警部の失恋/時を超える桜の恋」(2010-08-14〜08-28)
花火大会で事件に巻き込まれた小林先生が、警視庁での聴取時に自分と瓜二つの佐藤刑事の存在を知り、さらに白鳥がかつて佐藤に夢中だったことを知って「自分は身代わりだったのでは」と誤解し、白鳥に冷たく接するようになります。最終的に犯人逮捕の場面で、白鳥が「やっと思い出して頂けましたか…この子達が生まれる…遥か前から…僕が貴方に…恋していた事を…」と告白し誤解が解け、両想いが確定する3話構成のアークです。
#1130-1131「トリプルコラボの浮気疑惑(前編/後編)」(2024-07-20/08-03)
小林先生が(実は千葉のサプライズ相談に乗って)千葉と同席していた姿を歩美たちに目撃されますが、白鳥はこの状況を見ても他の2組のように問い詰めることはせず、小林先生を疑わない姿勢を見せます。3組それぞれの反応の違いが対比的に描かれる、シリーズのコメディリリーフ回です。
まとめ
高木と佐藤の「本庁の刑事恋物語」が正面から描くじれったい恋なら、千葉と苗子は気づかない幼馴染の片想い、由美と秀吉は元カップルの腐れ縁、白鳥と小林は運命的なすれ違い——警視庁組には、それぞれ違った味わいの恋模様が詰まっています。
2020年の「標的は警視庁交通部」で千葉×苗子と由美×秀吉が交差し、2024年の「トリプルコラボの浮気疑惑」では千葉×苗子・由美×秀吉・白鳥×小林の3組が勢揃いする——長年ばらばらに描かれてきた恋物語が少しずつ合流していく構成も、このセレクションの醍醐味です。
次回は警察学校組のセレクションをお届けする予定です。あわせてお楽しみください。